2013年11月30日土曜日

多寡先警部補の事件簿 ~原ヶ島殺人事件~4 by 響 次郎

浜下港
(1)
 多寡先警部補は、トロピカルフレーバーのアイスコーヒーを飲み干した。あれから、十五分が経過している。そろそろ、ブラックのコーヒーと、ハニー&ローストナッツパンケーキを頼もうかと思った瞬間、彼の携帯が鳴った。
 入り口付近の座席が空いていたので、そこで詳細を聞くと、今いる第562方面から第563方面への支援(応援)が決まったとの知らせだった。
『警視庁刑事部捜査一課、多寡先警部補、警視庁130708事件の解決に向け、全力で対応します』
 花咲署長の方を見ると、多井刑事もまた、本件事件担当の命を受けたようだ。
「はは。こうなると思っとったけどな」と、花咲。
それを受けて、多井が「少し早かったですか?」
「まぁな」と、花咲が続ける。「でも、卒業して大きくなってゆく。それを喜ばん親はおらんよ……」
 花咲は熱い目頭を押さえている。
『卒業じゃありませんよ!』
 多寡先は、様々な経験を積んで、あすなろ署に戻って来る。そう思った。
 椰子の間を波風が心地よく揺れる。目の前の風景と、これから遭遇する凄惨な現場が、多寡先の中では結びつかなかった。
 花咲は、明日まで予定通り滞在するという。
「すぐ、専用船が出るんじゃろ? 今回の払いは、わしに任せてくれんか……?」
 あすなろ署の署長に、警部補と刑事は、深く頭を下げた。
「……第562方面の長として命ずる。第563方面の大石巡査らのもとへ赴き、一刻も早く、事件を解決してくれ。頼んだぞ」
 この場の花咲署長には、正確には「長」としての権限はない。本庁(警視庁)からの指令は、警部補と刑事に向けて出されたものだからである。あくまで、形式的なものであったが、多コンビにもそれは解っていた。
 『はい!』「はい」と、多コンビ。
 花咲署長の、その言葉は、今、この瞬間でしか言えないものであった。多寡先警部補も、つい、目頭が熱くなる。
 鼻腔と涙腺が繋がらないうちに、そしてその空気を切り裂くように、『行くぞ!』と多寡先警部補は、多井刑事を促し、喫茶室そして滞在先のホテルから出ていった。
 花咲署長は、ボーイを呼び、コーヒーのブラックを注文した。彼は涙腺がゆるむのを自覚しながら、書類を取り出し、明日から署に戻った時のスケジュールを立て始めた。


(2)
 第563方面の大石巡査が、パトカーの中で思考を巡らしていた。どれくらいが経過しただろう。およそ一時間という時間が、かなり長く感じられた。多分、大石巡査が(将来)巡査部長や警部補になっても、この瞬間のは、しばらく忘れられないのではあるまいか。

 「原1」と書かれたパトカー(この島にはこれ一台だけである。予備の原2も在るが、通常は使用しない)と、公衆トイレの間を往復して、もう一度、用を足して来ようかと思った時、同僚が車載の無線をとった。時刻は、七月九日午前八時三十分ちょうどだった。
「大石巡査、本庁から連絡です!」
「大石巡査です……えっ?! 多寡先警部補と多井刑事が来られるんですか?」
 本庁からの詳細連絡を聞き、その喜びが抑えられず「親しい友人との通話」と言ったニュアンスになってしまう。彼もゴホンと咳払いをし、丸めたハンカチで額を拭ってから、
「第563方面、大石巡査。本庁、刑事部捜査一課の多寡先警部補および多井刑事の支援を受け、警視庁130708事件の解決に向け、命がけで取り組みます。お任せ下さい!」とアピールした。つい、殉職してでも、と言いそうになったが。
 無線の向こうでは「了解」と、苦笑いを含みながら、指令センターからの連絡は切れた。

(3)
 さて。時刻は、山田が浜口を殺害した後の時間に戻る。
 殺(や)っちまった。コロシちまった!
 山田 侃(つよし)は、今は亡き浜口の車を運転しながら、思った。死体遺棄(いき)、殺人、それに窃盗……。これだけで少なくとも、三つの罪は犯している。七月八日午後十一時十六分以降、いや十六分を四十秒くらい上回っているかもしれないが、ともかく、山田は立派な犯罪者になった。
 明日の朝までは、金田二など、宿の連中は気がつかないだろう。いつものイベントだと思ってるに違いない。絶対にそうだ。しかし、翌朝になれば、この原ヶ島は駐在所しか無いとは言え、殺人の事が明るみに出る。どこかに身を……隠そうか。待てよ。それとも漁師に頼んで、小舟か何かを借りて、沖にでも出ようか?
 ダメだ。沖はダメだ! レンタル出来る時間は過ぎてる。どこも開いてやしねえ。畜生!
 白い車は原生林に差しかかっている。下原島である。駐車場は、そこいらに多く存在している。停める場所なら、どこだってある。しかし、事件が明るみに出たら、警察だって動くだろう。それを、空き地みたいな駐車場に停めておいたら、いやが上にも目立つ。捕まえてくれと自白してるようなものだ……。
 犯行が昼間だったら良かったのだろうか?
 山田はハンドルを握りながら、そうも考えてみた。
 昼間ならば余計に目立つだろう。セダンとか軽トラックが多い中で、オープンカーというのは、結構目に付く。BMWなんかの方が、逆に目立たないくらいだ。山田の車は、メルデセスベンシの1250シリーズだった。色はダークネスグレイだ。警察が事情を訊きに、合宿所に来て、その時に俺のベンシが無い事に気づくだろう。いずれにせよ、見つかるのであれば、時間稼ぎくらいにはなるだろう……。
 山田の喉は、風邪をひいてないのに、カラカラだった。こういう時には、ビールよりお茶なんかの方がいい。むろん、証拠が残る個人商店やスーパーより、自販機の方が足がつきにくいかもしれない。
 そう思って、行きの下原島と峰崎の境界にある自販機の傍らに停めた。

 お茶を買いながら、山田は(先を)考え続けた。ここで車を置いて行くのがいいのか、それとも、合宿所まで乗ってしまうのが良いか?
 室内を物色する。藍色の箱に収めてなかったレンズが、一つだけ残っている。マクロという、花などを大きく写したい時に使うレンズである。
 瞬時に、何かが山田の頭に閃いた。そうだ。
 更に、ダッシュボードを開けると、軍手が出てきた。
 車から降り、離れた場所で、マクロレンズを粉々にする。凶器に変わったカメラ本体と三脚と一緒に、交換レンズも入っていたから、調べれば、同じ持ち主の物だと分かる。
 マクロレンズの粉々に出来ない、大きな部品は、あからさまに置いていけば良いだろう。
 山田は一旦粉々にした一部をビニール袋に入れ、大きめの部品と共に、峰崎の方に撒(ま)いていった。パンクしないように、路肩の方に、である。そして、峰崎の先端、およそ三キロ辺りで戻ってきた。これ以上は時間のムダになる。
 山田は、缶の緑茶を半分くらい飲み干すと、エンジンをかけ、元見晴の合宿所に向かって走った。合宿所の隣に砂利が敷いてあるので、そこだけは十キロ以下の徐行に近いスピードで走った(?)
 もう一度、ダッシュボードを念入りに調べると、クレジットカードと交通系ICカードが見つかった。浜口の口座が(まさか)ゼロって事はないだろう。交通系ICカードなら、サインが要らない筈だ。交通系の方を財布に入れ、物音を立てないようドアを開け、キーを車内に残して、自分の車をそっと開け、同様に、忍び歩くようなスピードで砂利を過ぎる。砂利から砂利で、一時間近くは(軽く)かかってしまった。
 ベンシは島の北部を目指し、速度を上げて走り去った。
 幸いにも、合宿所とその周囲は山田の事に気づかない様子で寝入っていたようだった。
 時刻は、七月九日の午前零時を回った頃だった。

(4)
 日時は、多コンビが専用船に乗った七月九日の九時を過ぎた頃。
「警部補は、原ヶ島に行った事あります?」
 改まった調子で、多井刑事は多寡先警部補に聞いた。
『いや、初めてだよ
 多寡先は、彼方から迫り来る原ヶ島を眺めつつ言った。
「私も、初めてです」
『そうか』
 ウミネコが、船にまとわり付くように、そして離れて、どこかへと飛んでゆく。
『原ヶ島って、駐在所だけだっけ?』
 出港した初島の方へ振り返って、警部補が刑事に確認した。
「そのように聞いていますが」
 刑事の方は、少し不安さを出しながら返事した。大石巡査の不安とは違って、初めての場所で仕事をするという類のものだった。
『じゃあ。殺人事件なんかは大変だろうな』
「だからこそ、我々が行くんですよ(笑)」
『そうだな(笑)』
 警部補と刑事の多コンビは、努めて笑顔を造った。その後、浜下港に着くまでは、終始無言だった。多寡先は、犯人がどのようにして逃走を続けているんだろう、と思った。犯人は部外者(島の外)の人間なのか、島内の人間なのか……。島内の人間であれば、受ける衝撃は大きいに違いない。住人は疑心暗鬼に陥るだろう。地域コミュニティも、崩壊へと向かっていく。人間味あふれる島が、無機質な空間に変わるかもしれないのだ。
 多井は、多寡先とは別なベクトルで考えているようであった。我々が戸惑うわけにはいかない!

 駐在所に居る巡査や巡査部長に事件を通じて、貴重な経験を積ませ、同時に教育もしていかなくてはならないのだ。それも、たった数日のうちに!
 多寡先は、デッキ階下の自販機に向かった。到着までに、コーヒーでも買って、気持ちを入れ替えるためだった。珍しく、多井が煙草を吸っていた。


(5)
 原ヶ島は、みるみるうちに大きさを増した。船は山の頂きに別荘や高級ホテルが乱立する(要するに、美晴台を北部から眺めている)沖を通過し、東部へと回って来た。浜下港の向こうには、原島病院やら原島役場、駐在所(船からは確認出来ないが)など、島の主要な建物が揃っている、中通り地区が見える。漁港は、浜下港ではなく、中通り漁港という扱いになっていた。大漁旗を模した、飲食店のノボリや看板などが目に入る。小田原や江ノ島などと同様、海鮮丼の類が人気なのだろう。蛇足ではあるが、真鶴(まなづる)では、まご茶漬けやエビフライが有名らしい(苦笑)。
 多寡先らを乗せた高速船は、接岸作業も含め、定刻通りに港についた。
 港が見えた段階で、多寡先が駐在所に連絡したので、大石巡査自らが、パトカーで迎えに来ていた。乗船デッキから、町並みを眺めてみると、車の側に警官が立っていた。
「私が巡査の大石です。遠いところから、お疲れ様です」
 少々丁寧に、その男が言ったので、多寡先もそれを受けて、自己紹介した。
『どうも。刑事部捜査一課の多寡先警部補です。それから……』
「もうお一方は、多井刑事さんですね。存じております」

『なるほど。本庁では、多井君とセットで「多コンビ」なんて言われているんですよ』

「それも存じ上げています。有名ですよね」
 大石巡査から、尊敬のまなざしを注がれる。

 チラと多井を見てから、『これは確認の意味なんですが……』と、多寡先が前置きして言うと、大石巡査が「なんでしょう?」と聞き返す。
『ええ。こちらの駐在所には、どのような階級の方が勤めていらっしゃいますか?』と、訊いた。
「気を悪くされたら申し訳ないですが」と、多井が上手い具合いにフォローを入れる。
「ここは、巡査と巡査部長だけです」と、大石巡査。
『なるほどね』とだけ言って、多寡先は頷いた。
 ちなみに、階級とは、警察内では下の方から『巡査-(巡査長)-巡査部長-警部補-警部……』となっており、その遥か上に警視正や警視総監がいる。巡査と巡査部長で警察全体の、およそ六割を占めるとのデータも有る。
『続きは、無線警ら車の中でしましょうか?』
「無線警……って、何ですか?」
 大石巡査が思わず聞き返す。
 警察学校で習わなかったのかと思いつつ、多井が苦笑して「貴方が乗ってきたパトカーですよ」と指さす。
 原1と書かれたパトカーは、飲食店が多い浜下を抜け、中通りに入った。ヘリポートのある七階建ての原島病院から少し離れて、こぢんまりした駐在所が建っていた。
 病院の脇を通り過ぎる時に『白い手袋は、予備を含めて、多くありますか?』と、多寡先が訊いた。
 案の定(笑)、「白い手袋って何ですか?」という答えが大石巡査から返って来て、多寡先は『停めて下さい!』と強く言った。原1パトカーは、病院の玄関から二十メートル進んだ通りに止まった。大石巡査も、その同僚も、呆気に取られている。
 多寡先が居ないので、多井は、大石巡査に聞いてみた。「もしかして、証拠品(遺留品)の類には触りました?」
「いいえ。現場保存の鉄則が在りますので、KEEPOUTの封鎖と写真だけ撮っています。他には何も」
と、大石巡査がためらいがちに言うと、多井は、それは良かったと胸をなで下ろしたのだった。警官が触ったのでは、余計な指紋が付いてしまう。余計な指紋というのは、無駄な情報なので処理をするのに(しなくていい)時間を費やしてしまう。その分だけ、捜査にロスが生まれてしまうのだ。
 多寡先がパトカーの後部座席に「何か」を投げ入れた。それは、手術用のゴム手袋だった。多井がニヤリと笑い、多寡先は助手席に乗り込んだ。
「どんな風に頼んだんですか?」と多井。
『駐在所の手袋の予備が無くなってしまって困っているんだ。そう言ったら、快く貸してくれたよ』と後部座席を向いて多寡先。
「事件の事はまだですね」と大石巡査が割り込むと、
『そこんとこは上手くかわしたさ』
 言葉の語尾は、呟きに近かった

 殺人事件など起きそうにない島だ。だから、殺人事件発生とマスコミなどが知ったら、野次馬が詰めかけるだろう。『原ヶ島で初の殺人事件』と出たら、間違いなく、捜査に支障が出るかもしれないし、その可能性は極めて高い。真実を伏せる訳ではないが、円滑に解決をしたい。その後の批判は、甘んじて受けたいと思う。
 多寡先は、警視庁初島郡原ヶ島駐在所に着くと、奥の部屋で今朝別れたばかりの花咲おぉ、多寡先くんか。もう、あすなろ署が恋しくなったのか?」

『違いますよ、署長(笑)』と言ってから『実は……』と、殺人事件になった時の問題点を話した。
 署長は、ふむふむと聞いていたが、
「では。わしが何とかしよう!」
と、普段より一層低い重い声になった。多寡先は、妙な雰囲気に目を丸くしてしまった。
「どうしたのかね。ああ、風邪だよ、風邪。心配いらんよ……」と言う署長の声は、5.1chサラウンドよりも重厚だった。
(つづく)

2013年11月23日土曜日

多寡先警部補の事件簿 ~原ヶ島殺人事件~3 by 響 次郎

緊急指令

(1)
 あすなろ署から、警視庁本庁に異動した、多寡先(たかさき)警部補は、花咲署長や多井(おおい)刑事と一緒に、初島へ就任祝いという事で来ていた。
  あすなろ署は、一時期、近隣の警察署と統合され、あすなろ署自体の閉鎖という危機を経験している。その時、本庁の木崎という「特殊情報課」の刑事と競い、勝利を勝ち取った事がある。その時から、あすなろ署の存在が大きくなり始めたのであった。

 そういった功績が認められ、初島に遊びに来ていたのであったが。
「うーむ。本庁から位置確認のバッジが来とるな」
 花咲署長が、タブレットの画面を覗き込みながら言った。ちなみに、バッジとは、丸の中に数字が書かれた通知の類を指す。あすなろ署も(化石のような)デスクトップPCから、タブレット端末へと、華麗なる変身を遂げたのであった。最もこれは、特殊な例だと言ってもよい。
 多井刑事が、タブレットを(シャッターを下ろすように)上から下に引き出す動作(フリック)をすると、「本庁より、位置認証の通知が来ています」と、赤い字で書かれている。すぐ右上の×を押すと、通知を読んだという事にできる。
 こういった緊急のバッジは珍しい。現在、彼らはホテルのロビー横の喫茶室にいる。全館Wi-Fiが使えるのだ。しかも、パケット通信などと違い、月額三百八十円ほどだ。
 多寡先警部補が、皆の方とタブレットを見て『どうしますかねー』と言った。彼の気持ちは、半々であった。仕事に向かいたい気持ちと、何もかも忘れたいのと。
 しかし、ふと、多寡先警部補は、これはもしかすると、本庁(本土)の方角では無いな、と感じた。依頼は海から、である。位置確認したいという気持ちが勝ってくる。
 多寡先警部補は、多井刑事をちらっと見た。多井刑事は、それに向かってニヤリと笑った。「多コンビ」という言葉も出来てるほど、意志の疎通は、それで充分であった。多寡先警部補が、設定画面から、現在位置の認証を許可した。本庁データセンターと初島の滞在先が、情報を通じて繋がり、現在地に関する座標データが、サーバに送信された。
 この時、彼らの許可は、優先順位としては最下位であった。しかし距離からすれば、一番近い場所に位置していた。それはつまり、彼らが事態に、すぐさま対応可能だと言う事を意味していた。


(2)
「第152方面、位置確認出ました!」
「第76方面も同様です!」
「同様とは何だ? 最後まで、ちゃんと言わんか!」
 新米司令官に向かい、上司が檄(げき)を飛ばす。
「りょ、了解。第76方面の位置確認出ました!」
「らじゃ」
 警視庁の総合指令室。その中で『警視庁130708事件』に対して、即座に対応できる部署はどこかを捜していた。原ヶ島は第563方面であり、初島から最も近い。専用船で二十分もあれば、浜下(はました)港に到着が可能だ。そろそろ、時間切れになろうかという頃、
「第562方面、位置の認証完了!」
「タイムアウト」
 センターの総合指令長が、サーバの受付時間切れを告げた。にわかに、指令室が騒がしくなる。
「第562方面……?」
「初島だ」
「初島、って言うと?」
「あすなろ署だ!」
「あの、あすなろ署の面々か?」
「初島からなら、専用船で二十分あれば着くじゃないか!」
 まるで、サッカーでゴールが決まった瞬間のように、言葉と声の波が広がっていく。
「静粛に」
 指令長が、マイクの音量を上げて、言った。興奮はまだ収まらない。
「静粛に! ……ごほん」
 今度は、消波ブロック(テトラポット)に打ち消された波頭のように、静けさが広まってゆく。
 センターの指令長が事務方とヒソヒソ話し合う。その結果は、ほぼ決まったような物だが。
 五分ほどして、指令長が首を縦に振り、卓上に固定されたマイクを握る。
「あー……」指令長が、センターの総意を代表して、結果を述べる。
「それでは」
 指令長の次の言葉を、固唾(かたず)を飲んで、皆待つ。センター内に、彼の低い声だけが響く。
「本件。警視庁130708事件の解決に向け、」早くはやくと、催促する空気が流れる。
 国会の答弁の盛り上がりとは逆だ。
「第563方面の支援には……」
……。

「第562方面に滞在中の、本庁、刑事部捜査一課、多寡先警部補と多井刑事を充てる事にします」
 指令室の盛り上がりとは対照的に、第563方面の大石巡査の焦りは、この時MAXに達していた。七月九日午前八時二十六分の事だった。

(つづく)

2013年11月16日土曜日

多寡先警部補の事件簿 ~原ヶ島殺人事件~2 by 響 次郎

分岐点
(1)
 夕雅浜は、近くの「御津岩(みついわ)」と並び、朝日や夕日の撮影スポットとして有名である。大晦日から元旦にかけて、出かける人も多いくらいだ。旅館の類は、近くには無く、元見晴か「美晴台(みはるだい)」の別荘やらリゾート、あるいは「中(なか)通り」という、島の東部で宿を探さなくてはいけない。それほど、何もない場所である。三年ほど前に公衆トイレが出来たくらいだ。道路は起伏が多いし、片道一車線で、退避所が所々に設けてあるような、そんな所だった。

 車は、絶好スポットからやや外れた、土埃がまみれる空き地に止まった。浜口は、先の自販機を出てから、缶を少し飲んでいたが、ここに到着してすぐ「グイグイと」やり始めた。案の定、酔っ払った勢いで鼾(いびき)をかき始める。彼が最期に言った言葉は「それじゃは、きれいは朝日ほ……」であった。一応、ヤツの身体を揺すってみたが、気持ちよく鼾をかいていて起きる様子もない。
 周囲を見渡し、車の流れを観察すると、三〜四十分くらいに一台という割合だ。ちなみに伊豆海岸交通(株)と、(株)初島リゾートが交互に運営する路線バスは、午後7時に運行を終了している。
 そうやってしきりに、車の流れを見極めた後、一度トイレに行き(実は、ここにも洗面台付近に防犯カメラが在った)、中通り方面に向かう車が通過したのを確認して、山田はドアを開けた。風だけが、やけに落ち着いていた。


(2)
 このような撮影行では、一眼レフなんかの荷物をもって来ている。三脚や換えのレンズを含めると、相当重い。それらは、藍色のバッグに入れられていた。山田も撮影機材だとは知っていたが、それが凶器になるとは、思っていなかったろう。
 運転席で気持ち良く眠る浜口をズルズルと(引きずり)下ろし、機材を一式運び出して、ドアを静かに閉める。彼が飲んだら起きないというのは知っているし、そうなのだが、これからする事が山田を慎重にさせていた。そうして、鍵をポケットから弄(まさぐ)って、車のキーを盗んでから、空き地の反対側へ道路を跨ぎ、引きずり続けた。これでも起きないとは、今日はどれだけ飲んでいたのだろう。まぁ、山田自身も人のことなど言えないが。
 その反対側は、小高い林に囲まれた場所で、奥は崖になっている。注意の看板と縄も張ってあるが、かなり年月が経過していた。崖下は六メートルほど有りそうな感じだった。

(3)
 ごくっと喉を鳴らし、唾を飲みこみ、食道に降りる前に山田は、ヤツに凶器を食らわし続けた。どこに当てたのか、どのくらいの強さだったのか判らない。ヤツが色々な角度に変化しながら、汚物と血を吐き出し、呻(うめ)いていった。動かなくなったのを確かめて、かつて人間だったのと一緒に、凶器のバッグも、そこに棄てた。
 それらが下に届く前に、ガサッとした音を立てて、木立が揺れた。
 山田は時刻を確認する余裕すらないが、時間は七月八日午後十一時十六分のことであった。

 所有者が不在となった車は、土を巻き上げ、どこかへと猛スピードで走り去っていった。

発見
(1)
 次の日。七月九日午前五時四十分。現場の近くを、一人の老人が犬を連れて、朝の散歩に出ていた。この辺りは、景色が素晴らしいので、散歩に出ていても気持ちが良かった。
 犬が血の匂いとわずかな異変に気づいたのだろう。飼い主とは別の方向に、わんわんと鳴き、注意を促しはじめた。「ワン、やめなさい!」
 吠えるのより早く、老人は、彼の年齢に相応しくない力で、ワン(犬の名前だ)を引き戻した。それでも何とか、首を振ったりなどして、遺体の方に行こうとしたが、とうとう、老人の側まで引き寄せられてしまった。その犬は、言う事を普段から聞かなかった為、飼い主が特段の注意を払う事も、充分なコミュニケーションをとる事も無かったのだろう。もしも老人が、今までと違った接し方をワンにしていれば、あるいはこの時、死体が見つかったかもしれない。飼い主と犬は、次第に小さくなってしまった。ワンが、遺体の方向へ向けて、首と身体で訴えたような……気がした。

 この時点で、夕雅浜の死体には誰も気づかなかった.





(2) 
 七月九日午前六時二十分。元見晴の合宿所にも、朝が訪れた。いつもの二人なら、七時ぐらいにはここに戻って来るというのが、パターンであったので、残った三人組も別に不思議に思っていなかった。いつものように、管理人海沢うめの用意した朝食を一階で食べ、ご飯をお代わりしたり、焼き海苔とかハムエッグをリクエストしながら、のんびりとした時間を楽しんだ。今日は『そよ風荘』の名にぴったりな、爽やかな青空と雲だった。
 時刻は午前七時。二人は戻ってこない。午前六時五十五分あたりになると、寮の横に有る駐車場から、車の出入りを示すジャリジャリした音が聞こえるのだが、今日は、それすらも無かった。食事が終わったのち、金田二(きんだに)が「お土産」が気になったのか、浜口の携帯にかけた。繋がらない。次に山田の携帯にもかけたが、こちらは留守番電話になっている。何回かけても、同じであった。金田二が、二階の部屋に上がって、彼ら(林、井原)に事の次第を話すと、彼らも同様に、電話をかけてみたが、やはり、繋がる気配は無かった。「これは、何か、絶対に、おかしい!」
 金田二が、探偵のように、あるいはミステリー作家の文体のように、言葉を区切りながら、皆に言った。
 そして、一階に踵(きびす)を返し、管理人室に向かって行った。
 悪い予感も何もなく、井原は「ビールとツマミ、それに競馬新聞ある?」と、林にせがんだ。林はツマミのミックスナッツ・チーズがけピスタチオ入りをかざしながら、「ビールが少々とコレなら有るよ」と笑顔になった。まだ、緊張感や事件の欠片(かけら)も無かった。



(3)
 金田二が管理人室に辿り着き、奥のおばちゃんに「電話を貸してくれ!」と言った。「そんなに怖い顔をして。いいけど、持ってったら、ちゃんと返しておくれよ」と、海沢もまだ、深刻には考えず、彼らの食べたお茶碗を洗っていた。 金田二は、それに構わず、警視庁に電話をかけた。
「あの。金田二 初(はじめ)と言いますけど。昨夜から、友人二人が戻って来ないんです。おかしいので、急いで捜索して下さい」
「うん。今どちらからおかけになってます……?」
 固定回線だし、逆探知も出来るんだから、着信番号から(発信した)住所くらい判るだろ! と、もどかしく思いながら、
「東京都、初島郡、原島村、美晴台……いや違った、元見晴906」
「ええと。東京都、初島郡の美晴台、がどうかしましたか?」
 慌てているので、微妙なところで間違える。今度は、語気を強めて、焦りから早口で言った。
「東京都!初島郡!元見晴の906。『そよ風荘』から、かけています。番号は……」
「調べてみます。お待ち下さい」
 ああ、じれったい。二人に何かあったら(もう、何かが起きているのだが)どうするんだ!
 そんな思いで、数分が経った。警視庁は千代田区らしいので、初島郡の原ヶ島駐在所まで転送するという。

(4)
 一旦通話が切れて、再び、繋がった。
「もすもす。今、本庁のセンターから電話があったがね? 友人二人が、戻らんつーのは、ホントかね?」
 島で、唯(ただ)一つの駐在所、大石虎吉巡査の声がした。標準語と比べ、少しなまりがあった。
「ええ、本当です。いつもならば、朝の七時に戻って来るんですが……」
 金田二は、山田と浜口の二人の日常と、昨夜彼らが合宿所を出てから今朝までの相違点を、巡査に話して聞かせた。勿論、彼らと一緒ではないので、夕雅浜の出来事までは、金田二にも判らない。
「ふーむ。ま、調べてみなければ解らんがね。ええと。出ていった車ってのは、判るかぃ?」
「ちょっと待って下さい」
「あぃよ。あまり待てねぇだよ」
 語尾の「てねぇだよ」を聞かないうちに、金田二は階段を駆け上った。案の定、階段を一段、踏み抜いてしまったが、落下する事は避けられた。
 ビールとツマミでご機嫌な二人(いつ、仕事とかしてるんだ?)のうち、林から消えた車のナンバーを聞き出せた。
「すみません、お待たせしました」上ったり下りたりで、金田二の息は弾んでいた。少し、裏返った声で「ナンバーは、『原ヶ島502、「や」の104-68』です。白いオープンの『かふぇらて』」
「ええ……白いオープンで……」
 警察官が、電話口の向こうで確認した情報は、金田二が発したのと同じものだった。
「じゃあ、見つかったら、連絡するべさよ。ま。この島なら、一周四十分くらいだから、すぐに見つかると思うべな」
 大石巡査は、そう言って、電話を切った。おばちゃんが大袈裟なという顔で、次に踏み抜いた階段の修理をどうしようかと、電話帳を手に、二階に上がる金田二を困った様子で見ていた。

 合宿所の、本体の上にベルの頂(いただき)を乗せた時計は、七月九日午前七時十四分を示していた。

(5)
 それから、大石巡査は、同僚数人に頼んで駐在所に来てもらい、一人を駐在所に残して、後の二人を乗せ、(株)S自動車の『るーと』を改造したパトカーで、時計周りに島を一周しようと考えた。駐在所は、島の東部、中通りに在り、夕雅浜へは通常十分から十五分で着く。
 しかし、不振な点が無いかどうか捜索しながらなので、時間がかかる。
 途中で、顔など車中から確認できない人物は、停車して、確認したが、大方はこの島の(見知った)住人だった。
 やはりデマというか、いたずらの類ではないかと、大石巡査が思ったとき、件(くだん)の「注意」の看板と、雑木林が目に入った。それらの直前で、パトカーを停車させる。
 同僚の二人が注意深く、観察すると、雑木林と反対側に何かを引きずったような跡が見つかった。この辺は、風が強いのだが、幸いにも、その痕跡までを消し去る事は出来なかったようだ。
 大石巡査は、道路の反対側にも注意深く渡っていく。やはり、例の跡が深い林の下あたりまで続いている。警官独特の「何か」が働いた。

(6)
「写真は?」
「今、撮っています」
 鑑識の代わりに、デジタルカメラを取り出して、同僚の一人が撮影を始める。もう片方は、黄色いKEEPOUTの帯と朱色のコーン(工場現場などに使うアレだ)をパトカーのトランクから探し始めた。
「何だ?!」
 大石巡査が、雑木林の窪みを差して、叫ぶ。撮影していた同僚は手を止め、もう一人は、急いでトランクを閉めて(パトカーの施錠をつい忘れたようだ)、大石巡査の元に駆け寄った。差した方向には、不自然なハンモックのような、赤黒い物が、茂みの向こうに横たわっていた。下り傾斜の地面には、枝に引っかかったと見られる藍色の箱(中身はカメラ本体やレンズ等だ)があり、他には細かい布状の物や、キラキラした破片などが目につく。大石巡査の足元から崖下まで、血の跡が太く、次第に細く続いている。動脈を切った訳では無いらしく、飛沫状に辺り一面に飛び散るという現場ではなかった。
 大石巡査は、唸った。殺人事件というのは、駐在所で扱った事が無かったからだ。本庁に掛け合うしか無いだろう。しかし、一体、都心からここまでにどれ程かかるのだろうか。現場が荒らされはしないか、野次馬だって押し寄せてくるだろうな……。
 同僚の二人に、現場の撮影と封鎖を任せておいて、パトカーの中で、不安を覚えつつ、大石巡査は衛星電話で本庁と連絡を取った。

 七月九日午前七時四十一分のことだった。

(つづく)

2013年11月9日土曜日

多寡先警部補の事件簿 ~原ヶ島殺人事件~1 by 響 次郎

<物語に登場する地名、人名、団体名等はフィクションです>
プロローグ

 伊豆の初島から、専用船で南東に十二キロメートル行った場所に、東京都初島郡原島村に属する「原ヶ島」が在った。人口は二千八百十三人、面積は三十五.四平方キロメートル、標高が百七十六メートルある。一番高い場所に神植岳(かみうえだけ)が在った。
 リゾート色の強い島であり、全体的にハワイ島を小さくした様なイメージに近い。

 島の不動産は、多寡崎土地建物(株)が、開発は、その関連会社である(株)多寡崎リゾートが行っている。北西部から東部にかけては熔岩や切り立った崖が多く、南部は砂浜とか岩場、プライベート・ビーチが多い。リゾート地は海沿いか、眺望の良い場所に点在している。

 その海岸の一つである「夕雅浜(ゆうがはま)」で、男性とみられる転落死体が見つかった。



口論

(1)
 『そよ風荘』という名が異様に感じる、建物一面が苔むした合宿所二階で、事件の発端は起こった。合宿所の在る所は、原ヶ島の中でも「元見晴(もとみはる)」という地区に位置する。周囲は別荘が大半であった。騒ぎは、日も暮れて、初島の灯(ともしび)がハッキリしてきた頃である。パタパタと中心軸を起点に時間や日付が変わる時計は、七月八日午後七時五十三分を示していた。

(2)
「だからよっ、カネ返せっつってんだろ!」
 胸ぐらを掴みかかりそうな勢いで、山田 侃(つよし)は、浜口 繁基(しげき)に食ってかかった。山田の周辺には、空のビール瓶が散乱している。かなり、酔っている状態のようだ。山田は、頭のハチマキをかたく結び直して、浜口を睨んで言った。
「おう! 表に出てみるか?」
 外野が面白がって騒ぐ。
「いいぞ。やれやれぃ!」
  この騒ぎも、何回目になるだろう。二桁を数えるくらいにはなっていた。無言で迎える浜口をよそに、二人を除いた三人の男が、事態を面白がっている。カーペットには、ビールの染みだとか、何の燻製だかわからない物体等が、散らかっている。
 いつものように、どうせ、表へ出かけて話し合いだかに行った後、明け方にでも帰ってくるんだろう。そんな光景を、山田を除いた四人は想像していた。
 それが、いつものパターンだったのだから。
「ま、元気で行ってこいや。お土産は、秋風ドライの中でいいぞ」
 外野陣は山田の気持ちを知らない。浜口とは、借金を返せない時は浜口の妻を(借金の)カタにすると合意に至っている。別に外国に売る訳ではないが、奥さんと(一度)寝てみた。何でヤツに、こんな美人な奥さんが居るんだ。浜口のヤロウは、今夜に至っても(まだ)のうのうとしてやがる。
 次第に、山田は腹がたって来ていた。今日こそは、キチンとした返事を貰わなければいけない。こっちも、網の修理や燃料費で(家計は)苦しいのに。
 山田と浜口は、共に漁師仲間である。部屋に残る三人のうち、一人は既婚だが、山田を含めた残りは独身だった。
 ヤケに今夜に限りイライラする理由も、そういった所にあった。
「まぁそう、キリキリするなって。今夜は俺が運転してくからさ」
 浜口は、車のキーをくるくる廻しながら、愛車のオープンカーに近づいた。六百六十シーシー、K自動車工業(株)の『かふぇらて』で、車体は特別塗装色のシャインパールホワイトである。グレードは真ん中で、サイドミラーと車体が同色になっている。
 普段のイベント(苦笑)には、山田の車で運転して行くのが通例となっていた。
 浜口が軽い足取りで乗り込んだのに対し、山田は後から、無言でゆらりと近づいて行った。それはまもなくの惨劇を予告しているかのようであった。
 腕時計は、七月八日午後七時五十九分を示していた。


(3)
 白い車は、元見晴から海岸沿いに南下して、夕雅浜へと向かった。元見晴から「峰崎(みねざき)」を経て、原生林が覆い茂る「下原島(しもはらしま)」を経由して、夕雅浜に着く。浜と言っても、ゴツゴツした岩場が多い。
「また、夜が明けたら、夕雅浜の朝日でも撮って、戻りましょうよ。朝日を眺めながらのビール、旨いっすよ」
 浜口はいつもと変わらない調子だった。
 何もかも判ってて、この態度なのか。それとも、脳天気で生きてるのか。車中では、逆に山田が無言に近い態度を通し続けた。車は、ダイビング・スポットである峰崎を通過した。切り立った崖が多い。ウニや鮑みたいな物も採れそうな場所だ。
 途中、周囲が寂しく鬱蒼(うっそう)とした、羽虫が街路灯で浮かび上がるような場所の自販機で、浜口は普通のビールの秋風ドライと、秋風アルコールゼロを数本買い求めた。ノンアルコールの方は、プリン体がゼロらしい。
 二人は気がつかなかったが、ウェブカメラが静止画を記録していた。自動で定点撮影などが出来るタイプである。車を自販機に寄せた時のデータが残されていた。後に解析した時に白い車という事と、ややぶれてはいるものの、ナンバーが判明するだろう。撮影データは、自販機に内蔵されているWi-Fi(公衆無線LAN)でサーバなどに蓄積できる。

 浜口が腕時計を見ると、七月八日午後八時十五分だった。山田の方は、やはり無言で、闇色を受ける静かな波と、穏やかな月を見つめていた。

(4)
「今回は、朝日を撮るなんて気分じゃねぇや。悪いが、引き返そうぜ」
 山田が、部屋に居た時よりも、落ち着いた声で言った。
 会社の損益分岐点では無いが、彼らの人生で、まさに、殺人者と被害者になるという「分岐点」である事だけは、間違いない事実だった。浜口は、変わった事を言うなと思ったが、さして、深刻なモノに受け止めず、いつもの通りに受け流した。結果、取り返しのつかない道に向かって、二人は走りはじめた。
 それは、危険な坂を転がり落ちるように……。
「まぁまぁ」という返事を、山田は聞いていなかった。彼の頭の中は、衝動的な考えに(みるみる)埋め尽くされていった。やがて、それ以外の事は考えられない状態になっていた。

 闇の世界へとつき進む二人と対照的に、車は月の光を受けて、シャインパールホワイトの車体を輝かしながら、下原島を抜け、いよいよ夕雅浜地区に入っていった。
<つづく>