2011年12月10日土曜日

とある休日•7by やぐちけいこ



『それは10歳の幼い少女に突然起きた出来事。
少女は両親の自殺を目の当たりしてしまった。それは彼女をどす黒い暗闇に落とすに十分すぎるでき事だった。
この瞬間から少女は白い天井と白い壁に囲まれた部屋の住人になり、心を閉ざしいつも傍にいた大好きな少年の声も少女には届かない。
恵まれすぎていた事に気付く事無く育った少年は途方にくれ戸惑うまま少女の傍に居る事しか出来ない。
笑顔を無くしてしまった少女に再び笑って欲しくて毎日少女の元へ訪れた。少女が好きなお菓子を持って行ったり楽しい話を聞かせたりしたけれど何の反応も見せない少女。そんな日が1週間続き10日続き1カ月を過ぎる頃少年は少女の元へ行けない日が訪れた。
少年は思った。きっと今日一日くらい行かなくても何も変わらない。だから無理して行かなくても良いやと。そして次の日少女の元へ訪れた時、昨日ここへ来なかった事の大きさに気付く事になった。
少女は少年の顔を見た瞬間少しだけ頬をほころばせそして寂しそうな目をしたのは一瞬。その一瞬の表情の変化を読み取った少年は思い知らされた。この少女には自分以外に会いに来てくれる人はいない。両親でさえも会うことは二度と無い。孤独と戦っている少女。それに引き換え自分はどうだろう。忙しいなりにも愛情を注いでくる両親を持ち、学校には友人、家に帰ればくつろげる自分の部屋だってある。少女はそれを一度に全部無くしてしまったのを知っていたはずなのに。それなのに自分は友人と遊びに行き、ここへ来る事も面倒になり寝てしまったのは昨日の事。自分がここを訪れる事を少女はずっと待っていてくれていたに違いない。掴みかけていた手を自ら離してしまったのだ。
少年は改めて思う。この少女の笑顔を取り戻すのは自分だ。そして二度と寂しそうな目をさせてはいけない。どれだけの年月がかかっても良い。ここへ来なかった自分の愚かさを償いたい。
大好きな少女の笑顔をもう一度見たいから』

そんな二人にも平等に年月が過ぎ大人へと成長していった。




霞が倒れてから10日経った頃母親に呼び出された。
「霞ちゃんに会わせてあげるわ。だけどあまり刺激しちゃだめよ。まだ完全には回復していないけど後は霞ちゃん自身が乗り越えないといけないのよ。30分後 に戻って来るからくれぐれも逸らないでね。まずは彼女の話を最後まで聞く事。分かった?」そう念を押して霞の家を出た母親の背中を見送った。
ソファに俯き座っている霞。向かい側のラグに直接腰を下ろした。どう声を掛けようか迷っていると霞から話しだした。


次回、いよいよ最終回です。お楽しみに。

4 件のコメント:

  1. 本当にこのお話のようなことは難しい。
    必死にこちらに心を開いてもらおうとすればするほどずれていく。判ってくれたと思うと、全く反対の行動をされて、どれほどがっかりしたか、しかし、それもこちらの勝手な思い込み思い入れの押し付けに過ぎない。
    全く一方的な【恋】とおなじですね。
    たどり着くことがあるのだろうか?
    幻想でもまやかしでもいい、理解しあえた瞬間があれば、其れで生きていける気がします。
    お話、最後を楽しみにしています。

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  2. やぐちけいこ12/12/2011

    >mirubaさん

    人の気持ちって本当に難しいです。
    だからたくさんコミュニケーションが必要なのでしょう。
    歩み寄りも必要でしょうし、どうしても譲れないものは譲れないですしね。
    そうして理解しあえるとそれをまた糧に出来ます。
    最後まで呼吸をしなければ、と思います。

    次回はやっぱり出発点に…。

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  3. 御美子12/13/2011

    霞ちゃんにはパンダ野郎くんのためにも回復して欲しいです。

    そして、できれば過去の悲しい出来事を克服して欲しいです。

    ところで、パンダ野郎くんのお名前は何でしたっけ。

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  4. やぐちけいこ12/14/2011

    >御美子さん

    三題話から始まった話がこんな感じになりました。
    長かったです。
    やっと最終話です。

    いったい霞は何を話すんでしょうね。

    ちなみにパンダ野郎は薫です。

    無性にあとがきが書きたい気分です(笑)。

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