2017年10月13日金曜日

ステレオタイプ3 フランスと日本の赤ちゃんの名前 by Miruba

日本では、新生児に付ける名前のなかに「キラキラネーム」というジャンルがあるようだが、龍飛伊(ルフィ)紗音瑠(シャネル)姫星(きてぃ)など、学校の先生が読めなくて困っていると聞く。

昔は生まれてくる赤ちゃんの祖父母に命名を頼んだり、どこか世話役的な人にお願いしたりしたものだが、最近は赤ちゃんの両親が我が子のために、それこそ一生懸命考えている場合が多いようだ。

株式会社赤ちゃん本舗の「2017年上半期赤ちゃんお名前ランキング」では、約3万8千件の中のTOP20の名前が発表された。TOP3の名前を挙げると、
 <男の子>①悠真(ゆうま) ②蓮(れん) ③大翔(ひろと)
 <女の子>①咲良(さくら) ②結名(ゆうな) ③凛(りん) 
〇〇子や〇〇美の多かった私の子供の時代、友人の中には目にしなかった名前ばかりだ。

一方で、抱美弟(だびで)とか夜姫(ねおん)などの音に漢字を当てはめたキラキラネームは、将来を考えた時、名付けた事を後悔している親もいるらしい。いじめの対象になるのでは、と心配をしているのだ。

1993年「悪魔ちゃん命名騒動」があった。両親が自分の子供に「悪魔」と名前をつけようとして役所で受理されず、裁判を起こした。テレビに出たり雑誌のインタビューに答えたり、父親はすっかり「時の人」だったが、結局子供の名前は幸いにも「悪魔ちゃん」にはならなかったようである。

宗教色の強いフランスでは名前も宗教から来ていることが多い。
昔から名前はある一定の聖人暦から選ばなくてはならなかったが、かのナポレオンが規制を少しだけ緩和した。それでも、他の聖人暦の名前もよい、ということと、古代の歴史的人物の名前OKと言う限定されたものだった。名前の完全自由化されたのが1993年なのでまだ24年しかたっていない。
法律で自由化された当初は、元々人種の坩堝のパリなので、色々な新しい名前も増えていたようだが、最近またレトロな名前ブームがおきていて、2016年のINSEE「国立統計経済研究所」で公表されている名前の統計データを見てみると、TOP3は次のようになる。
 <男の子>
 ①Leo レオ【聖人暦11月10日】1世紀から20世紀初めころまで使われていたレトロな名前が復活
 ②Gabrielガブリエル【聖人暦9月29日】中世のころ人気でさらに2007年から2015年までトップの座を守り続けた。一位は逃したが堂々の2位。キリスト・イスラム・ユダヤそれぞれの宗教で崇拝される人物の名前であると言うところに勝利のカギが。
 ③Adamアダム【聖人暦5月16日】世界中が知っている旧約聖書に登場する名前。

 <女の子>
 ①Louiseルゥイーズ【聖人暦3月15日】こちらも、レトロな名前の人気ブームに乗れたからか、断トツの一位。
 ②Emmaエンマ【聖人暦4月19日】ジェーン・オースティンの「エンマ」と言う小説のヒットが影響し、米・英・カナダ・北欧・ドイツでも人気の名前という。
 ③Chloeクロエ【聖人暦10月5日】ギリシャ神話収穫の女神の名前

このように、一時期は結構奇抜な名前もあったようだが、最近はまた「昔の名前で出ています」と言うのか、聖人の名前オンパレードである。

とはいえ現在の統計で(年齢関係なく)フランスで番多い名前のTOP3は、
 <男> jean ジャン Michel ミッシェル Philippe フィリップ
 <女> Marieマリー Jeanneジャンヌ  Francoiseフランソワーズ
と、<フランス人の名前>では「これ!」と言うなじみ深いステレオタイプの名前ばかりだ。最もすべて聖人の名前ではあるが、かたや、統計経済研究所の発表から日本名を見てみると、(年齢に関係なく)日本人に多い名前TOP3は、
 <男>  ヒロシ、 タカシ、 アキラ
 <女>  ケイコ、 ヨウコ、 ヨシコ
と、これもまさに日本人の名前では馴染みのあるステレオタイプの名前ばかりとなる。
なんだか安心をしてしまうから困ったもので、ステレオタイプどっぷりの自分を改めて認識してしまう。

最もフランス人にも「他の人と違う名前がいい症候群」の親はいて、昔から見られるのがファッションの影響で、三宅一生の<ISSEYイッセイ>や高田 賢三の<KENZOケンゾー>また最近ではアニメの「セントセイヤ」の <SEIYAセイヤ>と言う名前もみられるという。

他には、
 ☆Fraise フレーズちゃん(イチゴのこと)
 ☆Nutella ヌテラちゃん(チョコレートジャムの商品名!!)
などと言う命名は、まだかわいいが、
 ☆Abstinence アブスティナンスちゃん(節制・禁欲)
 ☆Boghosse   ボゴッスちゃん(イケメンの派生語)
 ☆Cervelle  セヴェルちゃん(脳みそ)
 ☆Euthanasia ユタナジアちゃん(安楽死!!)
など、いったいどういう考えなんだろう、と見識を疑いたくなる名前もある。


日本の本屋には一つの棚を埋め尽くすほどの命名本があるが(私も娘の誕生の時に買ったけど~)フランスでも最近では命名用の名前ガイド本がたくさん出るようになった。

また、統計学的見地から、出世する名前とか、学校で成績優秀になる名前とか、その相関関係を調べている社会学者などもいて、少子化にあって益々子供の名前選びに、熱くなっているように思う。

子供は親の人形でもペットでもない。
もちろん国の文化を考えてステレオタイプの名前が良いとい言う訳ではないが、親のエゴで名前を付けることだけは避けたいものだ。

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参考・引用;
*赤ちゃん本舗
http://www.akachan.jp/company/news_release/article/post_334.html
*キラキラネームとは
https://matome.naver.jp/odai/2137302649433148301
*日本に実在する珍しい子供の名前より
https://matome.naver.jp/odai/2136040602024072401
*INSEE France 国立統計経済研究所
*OVNIParisミニコミ誌
https://www.insee.fr/en/accueil
*悪魔ちゃん命名騒動
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%82%AA%E9%AD%94%E3%81%A1%E3%82%83%E3%82%93%E5%91%BD%E5%90%8D%E9%A8%92%E5%8B%95
*名前についての豆知識
http://ww3.tiki.ne.jp/~masanao/study/study2no1.htm

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