慶尚道に実家がある独身女性は両親から「全羅道の男性とは結婚してはいけない」と言われ、少なからず驚いたそうだ。高校から海外留学させてくれるような自由な家風に、そんな固定観念は不釣り合いだと思えたからだ。
全羅道出身で、ソウルで美容室を経営する女性は違う理由で同郷の男性とは結婚したくないと言った。「全羅道の男性達は女性に仕事をさせて遊んでいることが多い」と言うのだ。これには補足が必要だが、韓国での立身出世に必須の、学歴を身に付けるという理由にかこつけて、特に若い男性が労働を免除されていると言った方がいいかも知れない。
全羅道出身者に対する一般的なイメージは「生活力がある」「働き者」「貪欲」「利己的」等らしいが、産業分布資料から判断して、農業や漁業が主力の全羅道が、貿易や重化学工業の拠点が集中する慶尚道に比べて、サバイバル術が必要な地域特性を持つが故の人間性に成らざるを得ないような気もしてくる。
余談だが、全羅道出身者には小説家や芸能人が多いと同時に犯罪者も多いと聞く。
このような地域間格差の根は、韓国建国以前の三国時代にまで遡ると考えられる。大まかではあるが、その時代に百済であった地域が今の全羅道で、新羅であったのが慶尚道である。
現在の韓国は百済を滅亡させた新羅の延長線上にあるせいか、韓国史は新羅が中心で、百済に関しては記述が少ない為、あまり知らないと答える学生が多い。
更に、李氏朝鮮時代には、全羅道出身者は要職に付けてはならないという申し合わせもあったらしい。
これが未だに適用されているかどうかは分からないが、第5代朴チョンヒ大統領から李ミョンバク現大統領に至るまで、殆んどが慶尚道出身者で占められている。例外は第15代金デジュン大統領が本貫(*脚注)は慶尚道だが生まれは全羅道、盧テウ前大統領は逆に生まれは慶尚道だが、本貫は全羅道である。
話が少し逸れたようだが、地域間経済格差と大統領の出身地は決して無関係とは言えない。政治的な事を一つ付け加えるなら、与党ハンナラ党の主な地盤は慶尚道で、最大野党民主党の主な地盤は全羅道である。
また、どちらかと言えば弱い立場の全羅道出身者達は、日本で言えば町村単位で同郷会があり、いざとなると結束が固い。
現大統領の任期は残り1年。元ハンナラ党党首にして、朴チョンヒ元大統領の娘である朴ウネ氏が有力な大統領候補ではあるが、直接選挙制で浮動票も多く、過去に何度も逆転劇があっただけに、最後まで予断を許さない展開になりそうだ。
ここ最近の韓国は国家的には高度経済発展をしているとは言うものの、就労環境が厳しい上に、物価も高騰していて、与党に追い風が吹いているとは決して言えない状況だ。
現在のように、野党と真っ向対決しているようでは、更なる発展は難しいように思える。地域間格差のような複雑な感情問題をどの様に扱うのかにも注目していきたい。
注:本貫……氏族(男系血族)の祖先発祥の地名のこと。姓と組み合わせて記す。(例えば釜山金氏・光州盧氏など)現在も戸籍に登録される。(広辞苑より引用)
百済と新羅と聴けば、さもありなん、と思える。
返信削除日本にいる韓国人の間でも、先祖の出で分かれていると聞いたことがあるが、本当だろうか?
パリでは、セーヌ川をはさんで右岸と左岸では、違うが、それよりむしろ、士農工商のような区別がある、それはイギリスのホワイトカラーとブルーカラーのような差別的ではないが、歴然としているようだ。それでも、いまどき、区別でも差別でも、結婚しちゃだめ、なんていう意見というか、半分命令のよな指示があるなど、驚きである。ロミオとジュリエットが、いまだに排出されているのかもしれない。
興味あるお話をありがとう。
みるさん、
返信削除コメントありがとうございます。
実際に本貫が同じである為に恋愛や結婚を諦めた悲劇もあると
聞いています。ドラマの題材にもよく使われるようです。
在外国の韓国人も心は常に祖国ですから同様かと思われます。
うーん。あなたたちのお話は難しくてよくわからないけど、差別はまだまだ存在しているっていうことなのかしらね。
返信削除差別なんてね、なくならないと思うわよ。
形を変えるだけだと思うけどな。今の世の中にも差別ってあるでしょう。
女の子は可愛いってだけで得をすることがあるとか、男にしたってイケメンってだけで女の子にもてたりとか。
でもね。差別というものは、している方とされている方の共同の幻想なのよ。片方が崩れれば、それは差別としてなりたたなくなる。少なくとも、私はそう思っている。
raitoさん、
返信削除コメントいただいていたのに返信が遅れ申し訳ありません。
差別にも色々ありますが
優位に立とうとする側が意図的に作った差別に関しては
劣位に置かれた側が理論武装をして状況を変える必要が
あると思われます。
御美子さん、
返信削除>優位に立とうとする側が意図的に作った差別に関しては、劣位に置かれた側が理論武装をして状況を変える必要があると思われます。
私は、そうは思わないわよ。そんなことをすれば、相手が優位に立っていることを認めることになるでしょ。
じゃあ、どうするかってことは、具体例がないと申し上げにくいけれど、少なくとも相手の土俵に上がっての論議は得策ではないでしょうね^^