2011年3月25日金曜日

年齢なんてただの数字 by k.m.Joe

ブラックミュージックのエバンジェリスト(伝導師)、k.m.Joeさんのエッセイが初登場。今回は、15歳でデビュー、その美貌で女優としても活躍した米国の歌手、アリーヤのあまりにも短い人生の栄光と悲しみを語ります。

アリーヤの94年作『エイジ・エイント・ナッシン・バット・ア・ナンバー』の邦訳から得たインスピレーションについて・・・。

年齢なんてただの数字

アリーヤはこのアルバム時点で15歳、プロデューサーのR・ケリーは25歳という若さ。二人とも確固たる地位を築いておらず、この作品を打ち出した時、自分達を興味本位で捉えて欲しくなくて、この言葉を前面に出したような気がします。

私生活でもこの二年後二人は結婚します。アリーヤはまだ17ですから、未成年でも結婚できる州に移って結ばれたそうです。

しかし、レコード会社の思惑などで二人は別れてしまいます。

その後アリーヤはティンバランドと組み、時代の寵児となり、女優としても成功します。

R・ケリーも今のR&B界に無くてはならない存在になっています。

ロマン的推測ですが、二人の愛は純粋だったような気がします。R・ケリーの性愛路線の奥にある、透徹したゴスペルの世界は、深く愛したアリーヤの事、そしてアリーヤの悲劇に大きく関わっている部分も有ると思います。

アリーヤの悲劇・・・彼女は更に大きく羽ばたこうとしている時、飛行機事故で死んでしまいます。享年22。

年齢なんてただの数字

彼女の活躍の支えになったかも知れないこの言葉は、結局彼女にとって辛い結果をもたらしました・・・たとえ「ただの数字」でもカウントされなくなった哀しみ・・・「伝説」という名の称号は得ても、彼女の存在自体が寂しく空回りしているようです。








2011年3月17日木曜日

東北地方太平洋沖地震に遭遇して・1 by 響 次郎

あの日。
2011年3月11日、午後2時46分。
自分は、珍しく母と共に、職場に居た。

何故、珍しかったかと言えば、去年の8月に
父が脳梗塞で倒れ、母と弟と自分の3人で運営していた職場を、私一人が、継ぐ事になったからである。
(このテキストを打っている今、座布団の下が、ガクガク揺れているような、そんな感覚を覚えるが)

その朝。
市場に行って、仕入れをしながら、母が妙な事を言った。
何の話か忘れたが、「それじゃ、のろしでも上げるようだね」
と言ったのだ。
変な事を言うなぁ、と、思っていた。
昼食は、早めに大衆割烹(そのチョイスも珍しい。何故ならば、
花屋はそれほど儲からず、私に任されてから、昼食は1日¥500と
決めていたからである)へ行った。
¥785ぐらいの、揚げ出し豆腐定食だったと思った。

午後からは、花束の注文(10個)を、早いペースでこなして、
一息ついた頃だっただろうか……?

「えっ? なになに、揺れてるよ。地震!?」
母も、それに反応して、、
「あ。揺れてる、地震。早く、レジ(のキー)抜いて!」

『えぇ!?』

人が。いや、建物ごと、大きな横揺れで、揺さぶられて居る。
10秒くらいの判断時間だったかと思うが、
一瞬、巨大なアトラクションに乗ったような錯覚を覚えた。

目の前で起こっている事が、脳では、理解出来ない。
『(柱に捕まって、何を遊んでいるんだ……)』

私の脳は、そういった奇妙な感覚で一旦は捉えた。
こういう想定外の事態で、的確な判断が出来ないのは危険だ!

瞬時の判断誤りが、命を落とす場合だって在る…………。

およそ1分後ぐらい。
自分の身に起こっている事が、ようやく理解でき、
出入口に向かって、早足で歩き出した。

ゴォーー! とも ガラーーー! とも、何とも表現できない
感覚で、兎に角(とにかく)揺さぶられ続ける。
上を見ると、照明器具が、左右に、揺られている。

出入口の付近に居て、ガードマンが「外に出て!」と叫ぶ。
皆、殺到までは行かないまでも、歩みを早めて、出口に急ぐ。

長い周期の揺れは、ようやく、収まった。

誰かが、ポツリと呟いた。
「これは……遠くで、トンデモナイ事に、なってるな……」
テレビのニュースで、速報が出た。
黄色と赤の、津波警報。日本全国の太平洋側が、ほぼゾーンに入る。
○○県××市の波の高さ、10m

この意味も、即座に、理解できなかった。
震度が出て来ない……

その時は、何故、震度より波の高さ情報を優先するのだろう?
と思った(しかしそれは、帰宅後に続報を観て、愕然とするのだが)

3時過ぎにも、また揺れた。
今度は、レジを素早く閉めて、出口に走る。
外に出て、周囲を見渡す。
母が、居ない。何をしているのだ?
店まで引き返すと、シャッターを閉めようとしている。
おまけに、ご丁寧に「CLOSED」の札までかけている(汗)

大地震だぞ! 何をしてるんだ!! はやく
「いや、お前が寒いと思ったから、ダウンでも……」

『馬鹿っ。今度遅れたら、置いて行くからな。
死んでも、知らんぞ!!』

再び、出口に向かう途中で、揺れは収まった。
判断ミスの連続である・・・・・・

それからは、冷静になって考えると、恐ろしさがこみ上げて来て
ほとんど、仕事に集中できなかった。
2回の地震後にようやく、トイレには行ったが。
会社の売店の女の子と。
「・・・携帯、通じた? 通じないね」
『ああ。揺れが止まってから、すぐにかけてみたけど……』
「通じないでしょ?」

通話が集中して、処理が、出来ないでいるのだ。
携帯は諦めて、ついったー(Twitter)で、情報収集する。

携帯の繋がりにくさ100%に反比例して
ついったーは意外にも、重い他は、リアルタイムに様々な情報を
提供してくれた。なんと、心強いことか。

母が、焦る。
「家と……連絡がとれない」

私には分かっていた。ほぼ、無理である。
通話が繋がらないと何回もかける。
回線に負担がかかって、ますます繋がらない……

ここまで来たら、悪循環としかいいようがない。
少し待って、公衆電話からの通話を試みた。
十円玉を、5~6枚、握りしめて。

※続く
・この度の震災で亡くなられた方々のご冥福をお祈りすると共に
被害に遭われた方の、一日でも早い回復を願っております。

2011年3月4日金曜日

園長の苦悩と期待/ やぐちけいこ



先に「あの笑顔を守るために」をお読みください。

 今日、また小さな女の子を引き取る事になった。
まだ3才と言うのにこの子は大人へ甘える事を諦めるような   目をしていて私の顔を見ても何の反応も見せない。
笑うと可愛いだろうと思われる大きな目をした子にいつかまた笑顔を取り戻せるだろうか。
引き取るたびに心をかすめる不安。
それより大きな期待を私はいつも抱いている。

完全なるネグレクト。
母親はシングルマザーで最初はがんばって育児をしていたらしい。
それでも精神的に追い詰められとうとう子どもがいるアパートには帰ってこなくなった。
突然帰ってこなくなった母親をずっと待ち続けたのだろう。
近所の人からの通報で警察とともに向かった部屋には横たわった菜々美がいた。
その横には誕生日プレゼントと聞かされている小さなクマのぬいぐるみがあった。
しばらく入院することになりその間に母親を探して貰ったが母親は育児ができる状態では無かった。

そして私の園に仲間が一人増えた。

初めて園に連れてきた時菜々美は何も話そうとはしなかった。何もかもを諦めてしまったような瞳。
クマのぬいぐるみをしっかりと抱きしめ緊張からか表情がいつも以上に固い。
その瞳を見た小学6年生の優(すぐる)がいち早く反応した。
この子は聡い子だ。
本能的に相手の欲しているものを見抜く。
それを本人は自覚がない。お仕着せの感じを相手に与えないので小さな子達から慕われている。

優はその日から菜々美の世話を焼くようになった。
今の菜々美には優の優しさが必要なのだ。
嫌がる事もせず、かといって喜んでいる訳でもない表情で優の傍にいる。

小さな心は深く傷ついている。
なかなか笑ってくれない菜々美に優は根気よくその日学校であった話をし一緒にご飯を食べたりお風呂へ入れたりと可愛がっている。
微笑ましいと思うが痛々しさを拭いきれないのも本心だ。
お互いの傷を癒すように一緒にいるのだから。

菜々美がここへきてから半年が過ぎようとしていた。
一匹の子猫が庭に迷い込んで来た。
それを菜々美と一緒に見つけた時菜々美は子猫をみて不思議そうな顔をして私を見上げたのだ。
そうか。子猫に興味があるんだね。
少しずつ意思表示が出来るようになってきていたのは知っていたがここまで興味を惹かれている菜々美を見るのは初めてだった。
子猫のそばにそっと近づいた。
最初は私の後ろから子猫を見ていたが、何もしない事が分かったのか自分から恐る恐る手をのばした。

「菜々美。子猫だよ。きっと菜々美より小さいよ。お母さんと離れて迷子になってしまったのかもしれない。しばらく傍にいてやれるかい?」

そう聞くと菜々美は小さく頷いた。

菜々美をしばらく子猫と二人きりにして様子をみることにした。
物陰から見ていると優が学校から帰って菜々美を探していたのだろう。
私に話しかけそうになるのを手で制し、静かに菜々美の様子を見るように即した。

優は驚いたような顔をして菜々美をしばらく見ていたが目から大きな涙を流し始めた。
自分は子猫ほどの力が無いと私に訴えるが、私はそうは思っていない。
菜々美が子猫に愛情を注ぐ事が出来るようになったのは優の存在が大きい。
何の見返りも無い自分への愛情を菜々美は一心に受けていたのだから。

でもあえて優には言わないでおこう。
もう少し成長した時、本人がきっと気付くはずだ。
それにまだまだ菜々美には優が必要だろう。
優と一緒にいる菜々美はとても柔らかい表情をしている。
そのことを優は気付いてないようだが、少しずつ菜々美は優に心を開きかけている証拠だ。

優は自分にも笑って貰えるようになりたいと泣いているがその望みはきっとそんなに遠くない時期に叶えられると私は思っている。

君たちはこれからもずっと他の子達より荒波を生き抜かなくてはいけない。
その力を少しでもたくさんつけて欲しい。

私も期待しているのだよ、君たちの未知への可能性を。


【にぃにといっしょ】

ここどこ?知らないおじさんと見た事無い顔だらけ。
ママは?
きょろきょろと探したけれど見つからない。
「菜々美、今日から僕たちと一緒に暮らそう」
そう言ってくれたのがにぃにだった。
その日からにぃにとはいつも一緒。
にぃにが学校へ行ってる時はつまらない。

子猫を触った。
いつもにぃにがしてくれるようになでてみた。
ペロンとされた。
びっくりしたけど何だか可笑しかった。
にぃにもなでてくれるかな。
にぃにと早く一緒に遊びたい。
にぃに にぃに にぃに
にぃにと一緒。
一緒がいいな。
にぃにと子猫と菜々美。
いつも一緒。
ずうっと一緒。