ステレオタイプというのは、判で押したように同じ考えや態度や見方が、多くの人に浸透している状態を言う。これは元々社会学の用語だ。
例えばお芝居などを見ていると、悪人は悪人のような台詞回しをしたりする。善人はいかにも善人の行動をとったりする。それが見る人にすりこまれ、「悪人はこうあるべきだ」と見てしまう。そこで「悪人」のステレオタイプが出来てしまうのだ。
この紋切り型の定義や思考を国民性に当てはめ、分析分類をするのが、国民性ステレオタイプだ。
国民性ステレオタイプを話すときのジョークに、世界中で知られたものを取り上げてみた。
★世の中で一番幸せな男性
日本人の妻をめとり、アメリカの家に住み、中国人のコックを雇い、フランス人の愛人を持って、イギリス人のメイドを使う。
★一番不幸せな男性
アメリカ人と結婚し、日本の家に住み、中国人の愛人を持ち、イギリス人のコックとフランス人のメイドを雇う。
★講演の始めに、
日本人は言い訳から始める 。
アメリカ人はジョークから始める 。
イタリア人は自慢話から始める 。
韓国人は日本人の悪口から始める。
中国人は韓国人と日本人の悪口から始める。
★船が沈没しそうになり、女性と子供をボートに乗せて男性は海に飛び込まなくてはならない。その時になんと言えば素直に飛び込んでくれるか。
イギリス人なら
「君は紳士だろう」
ドイツ人なら
「規則ですから」
イタリア人なら
「さっき美女が飛び込みました」
アメリカ人なら
「飛び込めばヒーローになれますよ」
日本人なら
「もうみんな飛び込みました」
といえばみんな飛び込んでくれる、らしい。
★イタリア人の犯罪者を捕まえたが全く白状しない。そこで手錠をはずし、両手を自由にしたら、突然しゃべりだした。
これなど、ジェスチャーたっぷりに話すイタリア人のくせを捕らえた笑える話だ。
このように、ステレオタイプの話は、ギャグにされたり、自嘲気味に会話に使われたりするが、「本当にそうかな?」と思うこともしばしばある。
人間は「なにじん」である前に「一個人」であり、性格は10人いれば10通りあるのだから。十把一絡げ的な分類に違和感を持つのは当たり前だ。
アメリカ合衆国メリーランド州ボルチモアに「アメリカ国立老化研究所 National Institute on Aging、NIA」<老化の本質を理解し、健康寿命を伸ばすことを目的とした研究所>というのがある。
そこで49カ国4000人の男女を対象に、
①あなたは、色々な国の国民がどんな性格特性を持っていると思うか、
②あなた自身はどういう性格特性を持っていると思うか、
という2点を尋ねた調査が行われたのだが、
①は殆どの国で「ステレオタイプのイメージ」は自国他国とも同じだったそうだ。
つまり、日本人は勤勉。フランス人は神経質。とは外国人も自国民もそういうステレオタイプイメージを持っているのだ。ところが、②の自分はどうかと質問した場合、殆どの国において<正反対のステレオタイプデータ>がでたのだという。
イリノイ州の「ブラッドリー大学の研究」でも、56カ国17837人を対象とした調査が行われ、同じような結果がでている。
他国からも自国からも超勤勉で努力家だと思われていた日本人と韓国人は、むしろ相対的に規範意識が弱く、気まぐれな性格というデータが出たのだから驚きだ。
では、このような国民性ステレオタイプをイメージすることが、一部の人間の断定的な印象で皆を誘導した全く無駄なことかというと、そうは捕らえていない国が多い。
アメリカでは、オペレーションズ・リサーチ(operations research、米)、イギリスでは、オペレーショナル・リサーチ(operational research、英)あるいはORといって、数学的・統計的モデル、アルゴリズムの利用などによって、【さまざまな計画に際して最も効率的になるよう決定する科学的技法】とされているのだ。
日本でも「統計数理研究所」が1953年から半世紀以上にわたって行っている国民性調査がある。それを社会調査資料として使うことが可能という。
ちなみに、2013年の統計では、日本人の長所としてどう思うかを問うたら日本人は「勤勉」「礼儀正しい」「親切」を挙げる人が7割を超えたという。国民性ステレオタイプの見本のような結果がでているのだ。
長期間継続して時代変化の少ない項目を調査することで、変動のない基礎資料が得られ、これを基にした色々な製品開発にも繋げられる。
また心理学的に、人間はステレオタイプを必要とする。ステレオタイプを知ることにより、世界をコントロールして効率よく相手を知り、相手国民にどのように対応対処すればよいか、また経済的にも優位に立てるか、その助けに使うのだ。
こうしてみると、【国民的ステレオタイプ】は、統計学を使った信じるものは救われる占いのように、ある種いい加減なもの捕らえていると、世界情勢に乗り遅れてしまうのかもしれない。「物は使いよう」ということか。
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引用:http://www.geocities.co.jp/WallStreet/1915/kaiho224.htm
http://umemats.cocolog-nifty.com/blog/2009/02/post-9316.html
http://ci.nii.ac.jp/els/contentscinii_20170806114549.pdf?id=ART0010425052
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【ステレオタイプの表裏】
私の友達ジャンは、売れない俳優だ。
端役をやらせてもらえるようだが、殆どエキストラ程度の舞台役者を20年も続けていた。
勿論それだけでは食べてはいけないので、カフェのギャルソンの仕事もしている。
彼は、「黒澤」「小津」の作品を高校生の時に見てから日本映画の大ファンになったのだという。
「僕は絶対、おしとやかな日本女性と結婚するんだ」
そう言っていたジャンにとうとう好きな日本女性ができた。
とてもおしとやかで優しいという。
私も同じ日本人として、彼女に紹介された。
話してみると、しっかりした人で、優しいとは思ったが、どうみてもおしとやかには見えなかった。
「彼女にジャンのどんなところが好きなの?」ときいたら、
「レディーファーストで本当に親切ですよね。ジャンは、私にお料理も作ってくれるのです。頼りになるのです。この年まで待った甲斐がありました。」
ん~ジャンは優しいけれど、優柔不断なところがあって、頼りになるかな。
とは思ったが、勿論口には出さなかった。
夫婦とも友達になった私は、何かで2人をパーティーに呼んだ。
結婚してから1年ほど経っていただろうか。
2人が離婚するという話を聞いた。
彼女が主人とベランダで話をしている時に、ジャンが私に言った。
「おしとやかだと思ったのに、全然違うんだよ。強引だし、ロジックじゃないし感情的だし。ガミガミとうるさくて、台詞も覚えられやしない。一人のほうが余程ましさ」
後片付けの皿洗いをしている時に、彼女が言った。
「フランス人って、みんな料理とか洗濯とか掃除とか、家庭内の仕事を分担してくれると思ったのに、あのひと家では何もしないんです。『日本の男はそうでしょ』、だって、ばかばかしい。
それに、フランス語をもう少し勉強してから働きたい、そのほうが条件がいいし、それにジャンとの2人の生活も大切だし、と思って様子を見ていただけなのに、『君、自分の食べる分ぐらいは自分で働いてね』ですって!信じられない。女房を養う気などすっからかんなのよ」
ま、ジャンは日本映画の見すぎで、イメージ先行型だったし、彼女はフランスのパリジャンに憧れていただけ、ということか。
でも、これで、ステレオタイプばかりの人がいるわけ無いと言う、勉強にはなっただろうと思った。
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