2011年6月12日日曜日

釣れるか!よたろう by 網焼亭田楽

編集部より出された3つのお題を使って作品をつくる「三題話」に、週刊「ドリームライブラリ」の執筆陣達が挑戦しました。第1回目のお題は「中国・船・ギター」。一見なんの脈絡もないこれらの単語を全て折り込んで、エッセイ、小説、落語などの作品を作り上げていきます。
今回は、網焼亭田楽さんの新作落語をお楽しみください。


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昔からホラ吹きってえ奴はいるものでございます。
知ってて吹くのがホラならば、
知らずに吹く奴は妄想癖というのかもしれません。

「おい、よたろう」
「なんでございましょう、だんなさま」
「暇だなあ」
「あたいはそうでもありません」
「何言いってんだい。さっきから、ぼーっとしてるだけじゃないかい」
「そんなことはございません」
「じゃあ、何してんだい」
「釣りでございます」
困ったね、こいつ。暇すぎて妄想癖がでちまったよ。まあ、どうせ暇なんだ。よたろうの妄想癖に付き合ってやるとするか。
「で、どこで釣ってるんだい。海かい、川かい、湖かい」
「船でございます、だんな様」
こいつ、妄想のわりには設定が細かいね。
「船ってのは、手でこぐボートかい。それともモーターのついてるクルーザーのような船なのかい」
「いいえ、違います」
「じゃあ、何に乗ってんだい」
「宇宙船」
おいおい、こいつ大丈夫かい。
「宇宙船なんかに乗って、何釣ってんだい」
「国でございます」「そりゃあ無茶だな、さすがに国は釣れねえだろう」
「昨日は日本を釣り上げました」
「すげえな。今日は何狙ってんだい」
「中国」
「そりゃあ、大物だ。で、釣れそうなのかい」
「今、食いついたところでございます」
「ほんとかよ。そりゃあ、てえへんだ。あたしに何か手伝えることはないかい」
「歌でも歌って応援してください」
「そんなことならおやすいご用だ。ここにちょうどギターもある。さあ、ギター弾きながら歌ってやるよ」
「きたきたきたきた。あー、ダメだ」
「どうした、よたろう。あたし一人でも歌って応援してやるから。何とかお言いよ」
「そいつは、引きが足りねえ(弾き語りねえ)」

おあとがよろしいようで。

2011年6月10日金曜日

束の間の夢 by 御美子

編集部より出された3つのお題を使って作品をつくる「三題話」に、週刊「ドリームライブラリ」の個性豊かな執筆陣達が挑戦しました。第1回目のお題は「中国・船・ギター」。一見なんの脈絡もないこれらの単語を全て折り込んで、エッセイ、小説、落語などの作品を作り上げていきます。
今回は、御美子さんの新作落語をお楽しみください。


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おっ!熊、粋なもん抱えてんじゃねえか。
これか?八、さすがに目の付けどころがいいな。
そんな目立つもん抱えてりゃあ誰だって気づくだろうよ。
そうか?黒くて地味過ぎんじゃねえか?いげえだなあ。
そいつあ、まさかギターじゃねえだろうな。
なんだ、中身も分かっちまったのかい。つまんねえ。
分かるに決まってんだろ。まんまの形じゃねえか。
ま、分かっちまったんなら、しょうがねえ。
そん中におめえの商売道具の大工(でえく)道具なんざ入ってりゃあ笑えるけどよ。
八、おめえ、おもしれえこと考えやがるな。いっぺん、試してみっか。
止めとけ。肩に担げる大きさじゃねえだろ。大工(でえく)道具が中で偏って、バランス崩して怪我するのがおちだ。
それもそうだな。
ところで、いつからそんなハイカラなもん弾けるようになったんだ?
ここだけの話、実はまだ弾けねえんだよ。
じゃ、何で昼間っからそんなもん持ち歩いてんだ?
こんなもん伊達に持ち歩いてるわきゃねーだろ。今から弾き方あ習いに行くところよ。
へえ、こいつあ驚いた。音楽のおの字も知らねえおめえがねえ。
話せばなげえんだが、先月の寄り合いで、親父の代わりに出てた綺麗なネエちゃんがいてよ。
ふんふん、それで?
公民館でギターの小さいやつを教えてるって言うじゃねえか。なんでも、年に関係なく誰でも直ぐ簡単に弾けるとかでよ。
そんなに簡単でもねえような気もするけどな。
だろ?何でも発表会に出るのに人数が足りないとかで、他のやつらに追いつくように、ネエちゃんが個人授業してくれるって言うから、つい。
また、悪い癖出しやがって。
若い女に頼まれて、嫌って言えるかよ。
しかし、年金暮らしでよくそんなたけえもん買えたな。
それがよ。音楽狂いの孫が安く手に入る方法を知ってやがって。
へえーっ、どんな手え使ったんだ?
中国製の安いやつをネットで注文しやがったんだ。
中国製って、おめえ、でえ丈夫なのか?
それがよ、今どきギターの半分以上が中国製だっちゅうから驚きよ。
まあ、音さえちゃんと出りゃあ文句はねえんだろうけどな。
そいつあ、当の孫もしんぺえしてたんだが、音もまあまあだし、シリアルナンバーなんて、うまそうな番号まで付いてやがるんだ。
うまかねえけど、基本だろうよ。
孫が言うにゃあ、全部同じ番号かも知れねえんだと。大したもんだよな、中国は。
感心してんじゃねえよ。登録番号なんだから全部違ってなきゃいけねえだろ。
なんだ、八、おめえ物知ってんなあ。大工(でえく)にしとくにゃ、つくづく勿体ねえ。
呆れた野郎だな、おめえそれでよく今まで世間で通用してきたな。
おっと、いけねえ。初日から遅刻じゃ、洒落にならねえ。ちょっくら行ってくらあ。
若いネエちゃんっていうだけで、直ぐ舞い上がっちまうんだから。しかし、ギターとは、あいつもとうとうヤキが回っちまったな。(キセルを一服)

おや、どうしたんでえ、熊、えらくはええな。ちったあ弾けるようになったか?
それがよ・・・。
どうしたんだ、浮かねえ顔して。言ってみろよ。
ギターじゃなくてウクレレってやつでよ。
呆れたやつだな。ギターとウクレレの区別も付かねえのかよ。
大の男が、あんな小せえもんじゃ示しがつかねえから、大きいのを買っちまえと思ってよ。
そういや、おめえ、ギターの小せえのとかぬかしてやがったな。
おまけに、習いに来てんのがバアさんばっかりでよ。発表会にゃあ揃いのムームー着るっ言うじゃねえか。こっ恥ずかしいたら、ありゃしねえ。
きょうび、バアさん達の間じゃあ、フラダンスも流行ってるからな。まあ、そうがっかりすんな。
そうだな。ここ1ヵ月ぐれえ、いい夢見たと思うことにすらあな。
何で1ヵ月なんだよ。
船便ってやつで、届くのにそんだけ掛かったってことよ。

お後がよろしいようで。

2011年6月4日土曜日

吉他船 by 響 次郎

編集部より出された3つのお題を使って作品をつくる「三題話」に、週刊「ドリームライブラリ」の個性豊かな執筆陣達が挑戦しました。第1回目のお題は「中国・船・ギター」。一見なんの脈絡もないこれらの単語を全て折り込んで、エッセイ、小説、落語などの作品を作り上げていきます。
今回は、響 次郎さんの短編をお楽しみください。

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「他の船が良ければ、ソッチに乗ってくれて良いアルよ?」
船頭が叫ぶ。
「……胡椒、シナモン、ピメント、丁字。略してコシナピチョね。
おっと、紅茶も積んでいるアルあったね。戦争中アルあいやー!」

俺は、世界を目指して、これから大海に出ようとしているんだが……
どうやら、この船頭さんは『コショウ戦争』から時が進んでないらしいw


「ふむ。俺の船は、凶他船だ。おだやかな航海よりも、
スリルの在る航海。やっぱ、海の男は命をかけなきゃ、な。
【むつ】じゃないけど、原子力で動いているのサっ! 乗るかい?」

・・・いや、止めておくよ。。


「やぁ、みんな! XXX(伏字)だよ!!
クッキーに著作権を表示しないとイケナイんだよ?
●を3つ、イラストに描かないと(僕と)約束する代わりに、
夢と魔法の国に、みんなを招待するよッ♪」

パレード中かよっ。日本のマイアミって処だろwww
誰よりも夢は在るんだけど、学生パスポートは買えない年齢だしなぁ。


どれも、乗るのは止めとこうか(苦笑)


で。
「吉他」はどこへ??
※吉他とは、中国語でギターの意味。





編集部より…イラストと本文は全く関連がありません
 

2011年6月1日水曜日

初恋 by miruba

編集部より出された3つのお題を使って作品をつくる「三題話」に、週刊「ドリームライブラリ」の個性豊かな執筆陣達が挑戦しました。第1回目のお題は「中国・船・ギター」。一見なんの脈絡もないこれらの単語を全て折り込んで、エッセイ、小説、落語などの作品を作り上げていきます。
今回は、mirubaさんの掌編をお楽しみください。

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孝が生まれたのは、九州の熊本。両親の影響で色々なジャンルの音楽に触れる機会が多かったからか、子供の頃から音感に優れていた。物心ついた頃にはギターを欲しがったが、中学になるまではだめだと諭され、孝は自分でギターらしきものを作り、それを弾いて加山雄三の真似をして遊んだものだった。

また、家が海のそばということもあり、泳ぐことも大好きで、夏だけでなく、ツツジの終わる春ごろから、コスモスの花散る秋ごろまで、真っ黒になって泳いだ。水泳の地区大会ではいつも優勝をするほどだった。

地元の高校に入っても相変わらず水泳を好んだが、泳げない季節にはサッカーをやった。

孝のキックしたボールが外れて、少し離れたテニスコートに飛んでいく。ボールを拾ってそっと手渡してくれた少女・裕子の目を、孝はまともに見ることが出来ない。

裕子は孝の初恋の相手だったからだ。
彼女もはにかんだように、それでも孝の目を覗き込む。
互いに触れた手と手が、心臓を締め付ける。
告白できるわけもなく、また言葉が交わせないかと、わざと裕子のほうにボールを蹴ったりした。

だがそれもすぐに別れは来た。
孝の両親が広島に住むことになったのだ。

「いつかきっとまた逢いに来てね」
「いつかきっと結婚しよう」
別れの時がむしろ二人を大胆にさせ、五月雨のなか切なく別れを惜しみ、涙した。

専門学校に進学したが、友人のいない広島で、孝は寂しさに耐えられず、ギターを抱えて路上ライブをはじめた。曲は裕子に聴かせたいと思ってつくった自作の歌ばかりだった。

音楽好きが高じて楽器販売の会社に就職した孝は、来る日も来る日もピアノの調律をした。耳が良かったので、その調律には定評があり、「音が良くなるので次回もお願い」と調律の予約が半年先まで埋るほどだった。

250本のピアノ線を一本一本音を合わせていく地味な作業だ。それでも、興味が尽きなかったのは、調律し終えた時の達成感がたまらなかったこともあったが、そのピアノの所有者家族に、たくさんのドラマが隠されていたからだった。それがまた、弾き語りをする孝の人生の勉強になったのかもしれなかった。

路上ライブが少しずつ有名になってきて、孝は地元中国地方の放送局でDJをすることになった。孝の甘い声は、リスナーの心を癒した。

ある日、ラジオ番組の中で読み上げるリクエスト葉書の中に、「裕子」という名前を見つけた。
ーリクエストは「一目ぼれ」をお願いします。ー
孝は、裕子の葉書に書かれてあった住所に手紙を出した。
「逢えませんか」
しばらく手紙のやり取りがあったが、DJなどをしているくせに、孝は裕子に臆病だった。
裕子からのリクエストがあると、心が浮き立ち、切ない思いを歌に出来るのに、なかなか積極的に逢いにいけないのだった。

それでもいくつか季節を越え、孝は、中国地方の広島港から、船で松山へ向かった。
裕子がそこに移り住んだと聞いたからだった。

松山行きフェリーは嵐で揺れた。

やっとたどり着いた港に待っていたのは、手紙ではわからない、裕子の姿だった。
長い髪をまとめて、左胸のほうへたらし、ベージュのコートと同系色のスカーフが洒落ていた。
すっかり魅力的になった裕子。孝は嬉しさに震えた。
裕子もまた、孝を気に入った様子にみえる。時々の手紙のやり取りが、長い付き合いのようで、違和感もない。二人は空白の時間を埋めるように語り合った。
そのままずっと二人でいたかった。時間が止ればいいと思った。

だが、帰りの船に乗る孝に、裕子が逡巡するように言った。

「私、婚約したの」

孝は、恥ずかしさで渡しそびれ、ポケットに入れたままだった指輪を、海に投げ捨てた。

その後もずっと中国地方のラジオ番組で自作の曲をギターで弾き語りしていた孝は30近くになってスカウトをされ、ヒット曲にも恵まれて、テレビにも出るようになった。
ライブ公演のチケットは瞬く間に完売する。順風満帆のようにみえたが、ある日ステージで倒れた。

孝は遠くから人の呼ぶ声を聴いた。
眠いのだが、その声には聴き覚えがあり、寝てはいけない、起きて返事をしなくてはいけない、と感じ、やっとの思いで目を開けた。

そこには、20年前にあの松山へ渡った船から見た、裕子がいた。
偶然にも、彼女の働く病院に担ぎ込まれていたのだった。

「そうか、君は看護師さんだったね」

「頑張って孝君、病気に負けちゃだめよ」優しく微笑む裕子の白衣が眩しかった。

「君は離婚したんだってね。噂に聞いたよ。

もう遅いかもしれないが・・・・

今度は僕と一緒になってくれないかな。高校生のときに、約束したじゃないか」


裕子は、涙を浮かべ、深くうなずいた。


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この物語はフィクションです。
が、物語のモデルはいます。

1999年6月24日、高血圧性脳内出血で天に召された村下孝蔵さんをしのんで。







 

2011年5月28日土曜日

滅びゆく神々 by 夢野来人

編集部より出された3つのお題を使って作品をつくる「三題話」に、週刊「ドリームライブラリ」の執筆陣達が挑戦しました。第1回目のお題は「中国・船・ギター」。一見なんの脈絡もないこれらの単語を全て折り込んで、エッセイ、小説、落語などの作品を作り上げていきます。
今回は、夢野来人さんのショート・ショートをお楽しみください。

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「ゼウスさま、大変でございます。大洪水がやってきて、このままでは我々神々は死にたえてしまいます」
「あわてるでない。こんな時のために巨大な船が用意してあるのじゃ」
「さすがはゼウスさま。でも、さすがにすべての神を連れていくわけにはまいりません」
「それはそうじゃ。各担当神につき一対ずつのつがいを選抜して乗船させる」
「なるほど、それは良き考え。ではさっそく準備いたします」

すべての担当神を一対ずつ乗せ、超巨大宇宙船は出発した。

----- 45.5億年後 ------

「ゼウスさま。何が行けなかったのでしょう。このノアの箱船地球号では、神々はもはや絶滅寸前」
「最小存続可能個体数を考慮に入れるのを忘れておった」
「それは、なんでございましょう」
「個体群が長期間存続するために必要な最低限の個体数のことじゃよ」
「だいたい、どれくらいいれば存続可能なのですか」
「種によっても差が大きいのじゃが、中国のパンダなどでは50~60頭と言われておる。脊椎動物の平均で500個体から1000個体じゃな」
「少ないではないですか。わがノアの箱船には一万ほどの神々を乗せてまいったはずです」
「ところが、我ら神々の最小存続可能個体数は八百万と言われておる」
「えー、それではとても」
♪ジャンジャカジャーン、ジャジャジャ、ジャンジャカジャーン♪
「そのとおり。少なすギターということじゃ」

2011年5月25日水曜日

とある休日 by やぐちけいこ

編集部より出された3つのお題を使って作品をつくる「三題話」に、週刊「ドリームライブラリ」の執筆陣が挑戦しました。第1回目のお題は「中国・船・ギター」。一見なんの脈絡もないこれらの単語を全て折り込んで、エッセイ、小説、落語などの作品を作り上げていきます。
第2作目は、やぐちけいこさんの小説です。
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「近々お店を出そうと思ってるんだけど、お店の名前を一緒に考えて欲しいのよねえ」

朝もまだ早い6時にたたき起こされ自分の仕事部屋へ来いと呼び出されて来てみれば開口一番パンダ野郎はそう言った。
パンダと言っても着ぐるみを来ている訳でも顔がパンダでも無い。
今着ているTシャツがパンダの顔のアップだったりする。

「その女言葉似合わないからやめろ。眠い中わざわざ来たのに言いたかったのはそれか。それなら私はこれで失礼する」
入り口のドアの前に立っていた私はそのままUターンして帰ろうとすると背中に声がかかった。

「ちょっとちょっと。来たばっかりなのに帰らないでよ。店を出したいのは本当の事だし屋号を考えて欲しいのも本当なんだから」

半分部屋の外に出ていた身体を再び反転させてパンダ野郎の顔をまじまじと見た。

「店というのはどんな店だ?どうせくだらないものなんだろ?お前の酔狂に付き合うつもりはない。私は眠いので帰って寝る」

まだ何か言っていたように思うが思考が睡眠状態で何も理解出来なかった。
とにかく自宅へ戻りベッドへダイブし、そのまま昼過ぎまで眠った。
せっかくの休日が半分パーじゃないか。

しかし店っていったい何をする気だ?
まさか変なものじゃないだろうな。金持ちの考える事は分からん。
何故あいつと私はつきあいがあるんだっけ?
それも忘れた。
妙に女性っぽい所のあるあいつと、いつも男に間違われていた私が何となく一緒につるむようになって以来迷惑をかけられっぱなしだ。

今度は店を出すと言っているのだからすでに売る商品も店の土地も用意してあるに違いない。
ふと壁に立てかけてあるギターが目に入った。
そういえばこれもあのパンダ野郎から貰ったものだ。
私はギターを弾かないのに何故かあいつはわたしにこれを押し付けた。
仕方が無いのでそのまま壁に立てかけるだけのインテリアになったのだが、あいつはここへ遊びに来るたびにこれを弾いて楽しそうに時間を潰していた。
暇つぶしにここへ来るなと何度も言ったのだが聞き入れてもらった試しが無い。

曲が聞こえなくなった時、帰るのだろうと待ち構えていたのだが一向に帰る気配を見せない。
そのうち身体がこっくりこっくりゆらゆらと船をこぐ始末。
寝るなら帰ってから寝ろ!と追い帰した事数知れず。

どうせ今日も夕方ここへ押しかけて来るに違いない。今朝の話は途中だからな。
掃除でもするか、イヤその前にご飯を食べよう。
朝を食べそこなったのでお腹がすいた。

少々遅いお昼を済ませ部屋の掃除をし気分が一新した。

午後4時を回った頃インターフォンが鳴った。
ピンポ~ンピンポ~ンピンポンピンポンピンポン♪

「だーーっ!うるさいっ!近所迷惑だろ。1回鳴らせばまだ耳は達者だから聞こえると何度も言ってるだろうが!」

玄関を開けるとまだ鳴らそうとしているパンダ野郎に怒鳴った。
「そっちの声の方が近所迷惑だよ」などと言いながらへらへらと笑っている。

「何の用?」と冷たく言い放てば「やだなあ、今朝の話の続きに決まってるでしょ?入るよ~」
そこは勝手知ったる人の家。勝手にあがり込み定位置である二人掛けのソファーのど真ん中に座る。

仕方が無いのでコーヒーを入れた。
これを飲ませてさっさと帰って貰おう。

カップにコーヒーを入れてパンダ野郎の前に置く。
「ありがとう。あれからずっと店の名前を考えてたんだけど良いのが浮かんだんだ。聞いてくれる?」
「聞く。聞くからそれを飲んだらさっさと帰ってくれ」
「もう、冷たいなあ。まいいや。店の名前は印象深い方が覚えて貰えると思って考えたんだ」
「だろうな。店で何を売るかにもよると思うが何を売るんだ?」
「まだ、決めてない。決まったのは店の名前だけ」
「は?何をバカな事を。で、店の名前は何だ?」
「うん。『中々良い物を扱っていそうだな共和国』」
「何だって?」
「だから、中々良い物を扱ってそうだな共和国って名前にしたの。略して中国!!」
そこには満面の笑顔のパンダ野郎がいた。
「……。帰れ。帰って顔洗ってもう一度出直してこい」

パンダ野郎を追い出しドアに向かってクッションの投げつけた。
真面目に話を聞こうと思ったのがそもそも間違いだった。

そんなこんなでせっかくの休日を完全に潰してしまったのだった。




2011年5月22日日曜日

若い人達に伝えたい話 by 御美子

編集部より出された3つのお題を使って作品をつくる「三題話」に、個性豊かな週刊「ドリームライブラリ」の執筆陣が挑戦しました。第1回目のお題は「中国・船・ギター」。一見なんの脈絡もないこれらの単語を全て折り込んで、エッセイ、小説、落語などの作品を作り上げていきます。
今回は、御美子さんのコラムをお楽しみください。

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今から約1200年前、唐(現在の中国)に白居易という人がいました。生まれた場所は田舎で、家も貧しかったのですが、5,6才の時には詩を書き始め、周囲の人々を驚かせていました。


 その頃、都で役人になるためには、科挙というとても難しい試験を受けなければなりませんでした。白居易は29才の時に、白髪が増え、歯がぼろぼろになるほど一生懸命勉強して試験に合格し、都の長安で重要な仕事をしながら、形にとらわれない詩もたくさん書きました。詩の内容は色々で、政府への批判もありましたが、誰にでも分かりやすい詩を書くことを心掛けたので、多くの人々に吟い継がれました。


 ところが、法務大臣だった時に、皇帝であった武元帝に失礼があったということで、都から遠く離れた田舎で、つまらない仕事をするように命令されました。そんな白居易を都からわざわざ訪ねてくれた友達がいました。以下の物語は都に戻る友人達を送る時の話です。


 辺りはもう暗くなっていたので、友人達は既に帰りの船に乗っていて、馬で到着した白居易も船に乗り込み、別れの宴を開いていました。そこへ何処からともなく、琵琶の音色が響いてきました。(琵琶とは東アジアの楽器で、ギターと同じく弦を弾いて音を出します)


 田舎に不似合いな美しい調べを皆が不思議に思い、
「琵琶を弾いているのはどなたですか?」
と、闇に向かって問いかけましたが、なかなか返事がありません。それでも白居易達が熱心に尋ねると、やっとのことで応えが返ってきました。応えの主である中年女性は、次のような身の上話を始めたのです。
 
 「私は長安の出身で、小さな頃から琵琶を習い、有名な先生に付いて13才で一人前になりました。置き屋に預けられ、綺麗な着物を着せられ化粧をしてもらうと、とても美しく見えて、仲間から妬まれる程でした。貴公子達は一曲終える毎に、数えられない程の心付けをくれたものです。そうして毎日楽しく過ごしているうちに、唯一の肉親だった弟は軍隊に取られ、置き屋の姐さんも亡くなり、容色も衰えて独りぼっちになってしまいました。その後、商人と結婚しましたが、一人で舟で寝泊まりしながら、水辺を行ったり来たりして、お茶等を仕入れては売っているのです」
と、言うではありませんか。それまで、さほど気にしていなかった白居易自身の落ちぶれた状態と、今の彼女の置かれた状況が重なって、一同静かになってしまったのでした。


 女性はその後も何曲か弾きましたが、歌詞が無いことで一層聴き手の心に響き、最後に、それまでとは全く違う激しい曲を演奏し終わった後、一同感極まって泣き出してしまったのでした。


 以上が「琵琶行」と言って、白居易の代表的な感傷詩の内容の簡単な説明です。他にも楊貴妃と玄宗との悲恋をうたった「長恨歌」や晩年にまとめた「白氏文集」が有名ですが、平安時代の貴族には欠かせない教養であり、紫式部や清少納言も白居易に影響を受けたというのも興味深いと思いませんか?